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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1150号 判決 1949年12月22日

被告人

吉鐘秀

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人佐藤正治の控訴趣意は、別紙の通りである。

その第一点はついて

原審第一回公判期日において、被告人及び弁護人は、檢察官が本件住居侵入未遂の証拠として取調を請求した司法巡査前野幸次郞、同森甚吉作成の報告書を証拠とすることに同意しなかつたので、檢察官は、この証拠に代えて、巡査前野幸次郞、同森甚吉の証人尋問を請求し、原審はこれを採用したところ、原審第二回公判期日において、被告人及び弁護人は、右報告書を証拠とすることに同意し、右の証人尋問の必要なき旨申立てたので檢察官は、右報告書を証拠として提出し、右証人尋問請求を撤回したことは、原審第一第二回公判調書の記載によつて、明白である。

右のように、裁判所が証人尋問を決定していてもこれが証拠申請人の方で相手方の異議なく証拠請求を撤回すれば、はじめから、証拠調の請求がなかつたのと同一になるので、曩に爲した証拠決定を取消す必要はなく、右決定は当然その效力を失つたものと解されるから、この点について、原審が何等の決定を爲さなかつたのは正当である。又前記報告書及び右両巡査作成の逮捕手続書は、被告人及び弁護人において、結局証拠とすることに同意したものであるから、原審がこれを証拠として、本件住居侵入未遂の犯罪事実を認定したのは違法でなく、論旨は全く理由がない。

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